STL
STL
STLはコンピュータモデルから3Dの物理的モデルを作成するラピッドプロトタイピング装置で使用されるファイル形式です。ラピッドプロトタイピング処理には通常2つの工程があります。最初にプリプロセスコンピュータでSTLファイルを読み込み、3Dモデルを再構築し、そのモデルを水平断面になるように約1/1000インチの厚さでスライスします。次に製造装置で各断面を物理的に形成します。この物理的な「スライス」を順番に重ねてから接着すると、積層型の3Dモデルができ上がります。
ラピッドプロトタイピング処理で製造される3Dモデルには一連の制限があります。モデルは1つ以上の閉じた物体で表現する必要があります。独立したサーフェースや重複している物体は不可です。STLは三角形状の面だけを受け入れます。 したがって、form•Zはオブジェクトを出力する前にオブジェクトのすべての面を三角形状に面に分割します。三角形の面は指定された最小サイズより小さくすることはできません。モデルの最大サイズも製造装置によって制限されます。製造中に構造的に弱い部分が曲がらないように、モデルにサポート構造を追加することが必要になるときもあります。モデルが仕上がると、通常はサポート構造を取り除きます。
STLファイルのインポート
STLファイルは標準的な方法でform•Zに取り込まれます。[モデリング取り込みオプション:STL]ダイアログには1組の形式固有のオプションあります。
[スケール係数]:[X][Y][Z]:フィールドに入力したスケール係数をインポートモデルのジオメトリに適用します。スケールが不要な場合はデフォルト値である1.0のままにしておいてください。
STLファイルのエクスポート
form•Zプロジェクトの内容は標準的な方法でSTLファイルとして書き出すことができます。形式固有のオプションがいくつかある[モデリング書き出しオプション:STL]ダイアログでオプションを設定します。
[スケール]:一般にラピッドプロトタイピング装置は一定サイズのモデル作成に制限されるので、コンピュータモデルのエクスポート時にスケールが必要になる可能性があります。スケールを行うには[スケール]オプションを選択し、適切なスケールパラメータを入力します。
[スケール係数]:選択すると、このフィールドのスケール係数をモデルの全方向へ一様に適用します。
[境界ボックス]:選択すると、モデルを境界ボックスにフィットするようにスケールします。境界ボックスのサイズは[X][Y][Z]の各フィールドにある数値で指定します。
[現在の基準平面を基準として使用]:通常、STLモデルをスライスする方向はモデルのアクティブな座標系によって決まります。つまり、スライスはXY平面と平行になります。このオプションを使用すると、スライスする方向を操作できます。オプションを選択すると、基準平面に対して相対定義したモデルの座標系と一緒にモデルをエクスポートします(基準平面はXY平面になります)。この場合、スライスは基準平面と平行になります。
[全体の値を正にする]:選択すると、モデルの位置を自動的に調節してモデルの座標をすべて正値にし、座標値が[最小単位]フィールドの指定値より小さくならないようにします。ラピッドプロトタイピングシステムの中には正値のXYZオクタント内にすべて配置されているモデルデータが必要なものもあります。つまり、そのようなシステムは負値や0の座標値を受け付けません。
[サポート構造をレイヤに作成]:選択すると、サポート構造が作成され、その記述(モデル)はオプションの隣のフィールドで指定したレイヤに格納されます。表示されたレイヤ上にあるオブジェクトはすべてサポート構造と解釈され、別のSTLファイルに保存されます。このSTLファイルにはモデルファイルの名前に "sup" を追加した名前を付けます(例:mod1.stl の場合は mod1sup.stl になります)。ラピッドプロトタイピング処理でサポート構造が必要な場合には独立したファイルにそれらを保存する必要がありますが、この処理はform•Zで自動的に実行されます。サポート構造のあるレイヤにモデルそのものや、パーツが存在しないようにしてください。サポート構造があるレイヤにモデルがあると、意図したものとは違う結果になります。
[ソリッドのみ書き出し]:オンにすると、ソリッドオブジェクトのみをSTLファイルにエクスポートします。デフォルトはオンです。オフにすると、ソリッド、サーフェース、閉じたワイヤーオブジェクトをエクスポートします。
形式的に正しいSTLファイルにはソリッドオブジェクトが入っています。オプションをオンにすると、このことが保証されます。ラピッドプロタイピングシステムや3Dプリンティングシステムの中には、ある程度までサーフェースを処理できたり、隙間の修復やサーフェースのステッチでソリッドを作成できたりするものもあります。このようなシステム以外は[ソリッドのみ書き出し]オプションをオンにしてください。
[データの診断]:このオプショングループでSTL ファイルを実際に作成する前のデータチェックをシステムに指示します。[診断...]ボタンをクリックすると、データの診断処理を行います。チェックするものは選択しているオプションで決まります。デフォルトではすべてチェックします。データの診断結果は[STL診断]ダイアログに表示されます。データ内で異常を検出したときはSTLの要件違反で検出したエンティティの数とエラーメッセージをボックスエリアに表示します。
[座標の最小値]:オンにすると、すべての座標を[座標の最小値]フィールドの値とチェックします。座標値が[座標の最小値]の値より小さい場合は、このフィールドの最小値を表示します。
[三角サイズの最小値]:選択すると、オブジェクトの三角形分割によってできた三角形の辺の長さをすべて計算します。1/1000インチより小さい辺が見つかった場合、エラーを表示し、数値フィールドに一番小さい辺の長さを表示します。このような三角形のサイズの制限はラピッドプロトタイピング装置の現在の技術状況によって決まります。
[交差する三角形の数]:選択すると、三角形分割でできた三角形の交差をチェックします。交差が検出された場合、エラーメッセージを表示し、交差が見つかった三角形の数を数値フィールドに表示します。
[プレビュー...]:クリックすると、モデルのワイヤーフレームが表示されるプレビューダイアログを開きます。[スケール] [現在の基準平面を基準として使用] [全体の値を正にする]のいずれかのオプションを選択すると、それぞれの変換を適用してモデルを表示します。モデルの全寸法、最小座標、最大座標も表示します。エクスポートオブジェクトを黒で描画し、サポート構造をハイライトカラーで表示します。プレビューダイアログには表示の視点パラメータを操作するツールがあります。
要件事項と推奨事項
STLファイルへエクスポートする前に使用するラピッドプロトタイピング装置のメーカーの取扱説明書を十分に読んで、その推奨事項に従ってください。たとえば、3D Systems, Inc.(Valencia, California)製造のStereo Lithography Apparatus(SLA)で使用するSTLファイルの要件事項と推奨事項は次のとおりです。SLA 装置はレーザーを照射すると硬化する液体ポリマーを使用します。
モデルについて:
- 推奨する壁の最薄寸法は0.02インチ(0.5ミリ)。
- モデルは正値のXYZオクタント内にすべて存在している必要があります。
- モデルと原点との距離は最小にしてください。
- モデルの高さは最小にし、最も効率的なスライス方向を選択してください。このように作成に必要なレイヤ数を減らして、作成時間を削減します。
- 閉じた立体(空洞)の数を最小にしてください。
- 傾斜したサーフェースの数を最小にしてください。このようなサーフェースは、各レイヤの厚さがステップの高さになると、階段状になる傾向があります。最も重要なサーフェースが垂直または水平に向くようにしてください。
- パーツは液体ポリマーが入っているタンクの大きさに合わせる必要があります。大きいモデルをいくつかのパーツにして作成し、そのパーツを組み立てることで、大きいモデルを作ることができます。
サポート構造について:
- サポート構造はモデルのしっかりとした基盤になるように配置してください。これにはコーナーとエッジの支えも含みます。サポート構造によって、モデルが装置のプラットフォームから離れるようにしてください。
- 底面や側面の支持は2~3枚のレイヤ(0.04~0.06インチ)をモデルに重ねるようにしてください。これにより、サポート構造とモデルの間がしっかりとくっつきます。
- 斜め方向のサポート構造の両端部分は取り除きにくい部分なので、モデルのコーナーの延長としてではなく、控え壁として作成してください。
- 一般的にサポート構造は0.1~0.8インチの間隔を空けます。通常、サポート構造は目立つたわみや湾曲が発生しないように、十分短い間隔で配置する必要があります。
- サポート構造がプラットフォームの複数の排水孔をつなぐためにプラットフォームに接する箇所では、少なくとも0.65インチの長さが必要です。