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ラジオシティを使用したファイナルギャザリングの改善

ラジオシティを使用した
ファイナルギャザリングの改善

ラジオシティは、このセクションの冒頭で説明した3つめのグローバルイルミネーションの手法です。ラジオシティは群を抜いて1番複雑なアルゴリズムなので、複雑なアルゴリズムの詳細については後で説明します。ここでは、基本的な概念とその概念がファイナルギャザリングに関連していることを説明します。

ラジオシティはシーン内を移動する光の量を計算します。ラジオシティはシーン内のすべてのオブジェクトをラジオシティメッシュという、それなりに精度の高い三角形のパッチに分割して光の量を計算します。第1段階では、シーンにある各光源は各パッチを照らします。ここでは、シーンの直接光を計算します。第2段階では間接光を計算します。第1段階のあとで、1番強い直接光を受けているパッチが吸収されなかった(つまり、反射した)光の一部をシーン内へ送り返し、他のパッチを照らします。次に、2番目に強い直接光を受けているパッチが他のパッチを照らします。この段階では、まだシーンに反射光を送り返していないパッチの中で、1番強い直接光を受けているパッチがシーンへ反射光を送り返す、という処理を回帰的にくりかえしています。これにより、シーン内を移動する光が少しずつ増えていきます。十分な時間をかけて、この回帰的な処理を続けると、環境からの間接光の分布をかなり正確に生成できます。これをラジオシティ解析といいます。ラジオシティアルゴリズムはレンダリングの土台をなすものとしては実用的ではない2つの短所があります。1つめは、レンダリングすると光の強さを記録しているラジオシティメッシュによるアーティファクトが必ず出現します。2つめは、特にシーンが複雑な場合はシーンに十分な明るさを与えるために、十分な光をシーンに分布しようとしてラジオシティ解析に時間がかかることがあります。

ファイナルギャザリングと連動して使用すると、ラジオシティの短所を両方ともカバーできます。ラジオシティ解析を計算し、ファイナルギャザリングのレンダリングを実行すると、ラジオシティメッシュは自身を表示しなくなります。そのかわり、ラジオシティメッシュはファイナルギャザリングの間接光源のサンプル点をさらに追加します。ラジオシティ解析は連動したファイナルギャザリングの光を増やしているだけです。そのため、アーティファクトはラジオシティメッシュのレンダリング結果とはならず、ラジオシティを使用しているファイナルギャザリングのレンダリングでは現れません。ラジオシティ解析はシーンに多少の光を追加するために非常に長い時間をかけて実行する必要もありません。ファイナルギャザリングは他のサーフェースからその点に届く光の量を測定するため、光が照射される点より(シーン内で移動する光の方向に対して)後方に現れます。一方、ラジオシティは順方向に光を分布します。ラジオシティの回帰的な処理を2、3回くりかえしただけでも、シーンに多少の光を送ります。同時に、後方に現れるファイナルギャザリングとラジオシティの順方向の光はシーンに十分な光をもたらすことができます。多くのインスタンスにおいて、光を大幅に改良するためにはファイナルギャザリングのレンダリングのラジオシティ処理を2、3分追加すれば十分です。

図1.6.13:ラジオシティ解析を使用したレンダリング
図1.6.14:ファイナルギャザリングを適用してレンダリングしたラジオシティ解析
図1.6.15:ラジオシティ解析を使用し、高品質のファイナルギャザリングとアンビエントオクルージョンを適用したレンダリング

図1.6.9 は1個の平行光から始まり、天空光を追加して改良されたシーンです。天空光がオンの状態で、ファイナルギャザリングのレンダリングを再度実行する前に2分間のラジオシティ処理を追加します。図1.6.13はラジオシティメッシュの中間レンダリングです。ラジオシティメッシュによるアーティファクトがかなり目立つことに注意してください。しかし、このアーティファクトは最終レンダリングの品質には影響しません。重要なのは、ラジオシティ解析を進めるにつれて、シーンの明るさが増していることを確認することです。図1.6.14 は現行のラジオシティ解析を使用した低品質のファイナルギャザリングのレンダリングです。アーティファクトはなくなり、シーンの光は平行光と天空光だけを使用していたときより改善しています。図1.6.15は品質を高くしたファイナルギャザリングのレンダリングです。ここでは[品質]メニューに[4]を設定し、[アンビエントオクルージョン]を再びオンにし、さらに[環境光]は25%に減らしています。

2つの方法でファイナルギャザリングにラジオシティを追加できます。前述した手順で[表示]メニューコマンドの[ラジオシティ解析を生成]を選択しています。デフォルトではラジオシティオプションがファイナルギャザーサポートとして動作するように設定されており、ラジオシティ解析の実行時間は2分間に設定されています。また、20秒ごとにクイックプレビューレンダリングが生成され、光が改良されている様子を確認できます。解析の進行が速い場合は途中で解析処理を止めることができます。さらに時間をかけて解析する必要がある場合は、[ラジオシティオプション]ダイアログで解析時間を追加できます。一旦、解析が完了すると、RenderZoneレンダリングが実行されます。

2つめのラジオシティを追加する方法は[RenderZoneオプション]ダイアログの[ファイナルギャザリング]タブにある[ラジオシティの追加]チェックボックスを選択することです。このチェックボックスの下にオプションがいくつか表示されており、ラジオシティ解析を制御することができます。[時間]フィールドの値が解析処理にかける時間です。[次の時間まで]フィールドはラジオシティ解析中であれば、現行の解析で費やした時間を下の方で表示します。そのため、さらに時間を追加するためには、[時間]フィールドに入力する値は[次の時間まで]フィールドで表示されている時間より大きくなければなりません。[バウンディングボックスを使用]オプションを選択している場合、[ラジオシティバウンディングボックス]ツールで設定しているバウンディングボックスが使用されます。このオプションは1つめの方法でも利用できます。このオプションの詳細については後で説明します。[ソリューションを保持]オプションを選択すると、ファイナルギャザリングのレンダリングで計算したラジオシティ解析を、レンダリング終了後に保存します。オブジェクトや光を変更しないで、別のファイナルギャザリングのレンダリングを選択した場合、保存したラジオシティ解析を再利用します。このオプションをオフにすると、レンダリングをするたびに新規でラジオシティ解析を計算する必要があります。詳細パラメータが[グローバルイルミネーション]タブにある場合は、[品質]スライダーが表示され、ラジオシティ解析向けに任意で品質設定することができます。[ラジオシティの追加]オプションを使用すると、ラジオシティ解析の生成、ファイナルギャザリングのサンプル点の計算、およびファイナルギャザリングのレンダリングを1つの手順ですべて実行します。

RenderZoneでは、使用すると確実にラジオシティの機能を最大限にするツールをいくつか用意しています。[ラジオシティバウンディングボックス]ツールを使用すると、ラジオシティを計算する範囲が制限できます。たとえば、高層ビルのロビーのレンダリングを生成する場合、レンダリングで見えない部屋のラジオシティ解析を計算する意味はありません。[ラジオシティバウンディングボックス]ツールはラジオシティが必要な部分にぴったりとしたボックスを定義できます。このボックスの外側のサーフェースはどれもスキップされます。[ラジオシティバウンディングボックス]ツールを使ってバウンディングボックスのサイズを決定した後に、[ラジオシティオプション]ダイアログまたは[RenderZone]ダイアログの[ファイナルギャザリング]タブにある[バウンディングボックスを使用]オプションを選択します。ラジオシティの処理スピードを落とす2つめの状態はシーンにたくさんの面がある小さいオブジェクトがある場合です。このようなオブジェクトは小さいサイズであるために大量の光でもあまり反射しません。しかし、面の数が多いため、ラジオシティの処理スピードが落ちてしまいます。[ラジオシティ属性]ツールを使用すると、このようなオブジェクトをラジオシティ解析から除外することができます。たとえば、部屋と家具は2000~3000の面で構成される場合もあります。ただし、部屋のテーブルの上にある小さい彫像は、数万の面で構成されます。ラジオシティ解析からこの彫像を除外すると、彫像の反射光よりも視覚的にはるかにインパクトのある壁や家具に反射する光の量の計算に処理時間を費やすことができます。この2つのツールの詳細については、それぞれのセクションで説明します。