ファイナルギャザリングによるスペキュラー効果
ファイナルギャザリングによるスペキュラー効果
拡散光はサーフェースに当たると全方向に等しい強さで反射する光です。拡散反射だけするサーフェースは鈍く、つやがありません。粗くやすりがけされた木、または均一な壁の色は、高い拡散の反射率の材質の例です。スペキュライルミネーションは、入射(投射)角とほぼ同じ角度でサーフェースに反射する光です。曲面では、サーフェースに反射して視点に当たっているスペキュライルミネーションだけが見えます。スペキュラー反射があるサーフェースはつやがあり、典型的なホットスポットが見られます。磨いたプラスチック、または光沢のあるニス塗りは、スペキュラーの反射率が高い材質の例です。両方の特徴を持つ材質もあります。たとえば、表革には拡散とスペキュラー反射があります。

[ファイナルギャザリングのスペキュラを計算]オプション
ファイナルギャザリングは[スペキュライルミネーション]メニューに3つのオプションを用意しています。このオプションでスペキュラー効果の処理方法を指定します。
[ドームライトを使用しない]: スペキュラー効果を直接光源からだけで生成します。これはファイナルギャザリングを使用しないレンダリングと同じです。たとえば、光沢のある球体を照らしているスポットライトは明るいホットスポットを生成します。さらに、ドームライトのスペキュラー効果は計算されません。建築系のシーンのほとんどでは、天空光または環境光から放射するあまり一様ではない光が適切な拡散光を生成しますが、平らなサーフェースではスペキュラー効果をほとんど生成しません。たとえば、光沢のある床にはドームライトからのスペキュラー効果が一切現れません。そのため、スペキュラー効果の計算時間を節約できる場合もあります。
[ドームライトを使用]:スペキュラー効果を1つめのオプションと同じように計算します。ただし、ドームライトには直接光源からのスペキュラー効果の計算を含みます。このオプションはシーンが曲面を持つオブジェクトで構成されている場合、図1.6.12のデューンバギーのレンダリングのようなスペキュラーハイライトを生成するのに便利です。このオプションを使うとレンダリングの処理スピードは遅くなります。
[ファイナルギャザリングの間接光]:はじめの2つのオプションを使用すると、レンダリングには間接光源からの拡散光と直接光源からのスペキュライルミネーションしか現れませんでした。このオプションを選択すると、直接光源および間接光源にかかわらず、すべての光源からスペキュラー効果を計算します。このオプションは、建築系のレンダリングの家具のように、光沢のあるサーフェース上にかすかな輝きを生成する場合に非常に便利です。
[スペキュラーの反射率]パラメータを持つ各マテリアルの反射シェーダーには[ファイナルギャザリングのスペキュラを計算]というチェックボックスもあります(図1.6.16)。[ファイナルギャザリングの間接光]オプションを有効にするためには、このチェックボックスもオンにする必要があります。デフォルトでは[ヘアライン]シェーダー、[メタル]シェーダー、[プラスチック]シェーダー、[織物]シェーダーにあるこのオプションはオンになります。一方、この他のシェーダーでは、このオプションはオフになります。
ファイナルギャザリングにおける間接光源のスペキュライルミネーションの計算には時間がかかります。そのため、シーン内のこの効果が顕著で視覚的に望ましいものであるオブジェクトに対してのみ間接光源のスペキュライルミネーションを計算することをお勧めします。鏡や窓ガラスなどの反射率や透明度の高い材質には効果がありません。このオプションを各反射シェーダーで選択すると、スペキュライルミネーションを計算しますが、ファイナルギャザリングのレンダリングがいたずらに遅くなるだけです。


(a)間接光源のスペキュライルミネーションの適用なし
(b)間接光源のスペキュライルミネーションの適用あり椅子やソファにかすかな光沢があることに注意してください。
したがって、[ガラス] [ガラス(精密)] [ミラー] [マルチレイヤペイント]といった反射シェーダーをベースにしたレイトレーシングでは、[ファイナルギャザリングのスペキュラを計算]がデフォルトでオフに設定されています。このオプションの有効な使い方は革のような材質のソファのオブジェクトのマテリアルに[プラスチック]シェーダーを適用し、有効な[ファイナルギャザリングのスペキュラを計算]オプションをオンにすることです。ファイナルギャザリングはこのオブジェクトをレンダリングするときだけスペキュラー効果の計算に時間をかけます。光沢のある床には[グロス]反射シェーダーを使用します。[グロス]反射シェーダーは[ファイナルギャザリングのスペキュラを計算]オプションをオフにしています。この床にはスペキュラー効果が不要なので、レンダリングが遅くなることはありません。間接光源のスペキュライルミネーションを適用したファイナルギャザリングのレンダリングと適用しないレンダリングを図1.6.17(a)と(b)に示します。
間接光源のスペキュライルミネーションを計算するため、ファイナルギャザリングはピクセルからシーンへ多数の光線を投射しています。この光線は他のサーフェースと交差し、ファイナルギャザリングが交差している場所の光をそれぞれ計算します。交差している場所すべての光量の合計からスペキュラー効果を生成します。ピクセルから投射する光線の分布は一様ではなく、反射した視点ベクトルの行き先の周辺に集中しています。あらかじめ設定されている[品質]を使用すると、光線の数を自動的に設定します。ファイナルギャザリングのパラメータを変更すると、[レイの数]フィールドが[スペキュライルミネーション]メニューの下に表示されます(図1.6.18)。[レイの数]パラメータの適正範囲は10~400です。非常になめらかで光沢のあるサーフェースには粗いサーフェースよりもレイの数が必要になります。