直接光源をレイトレーシングのオプションタブ
直接光源をレイトレーシングのオプションタブ
ラジオシティ処理は光の分散を計算するのに最適です。この段階ではシャープなコントラストの境界は発生しないので、この二次光源を得るのに、通常、低密度から中間密度なメッシュで十分です。一方、直接光源は従来のレイトレースやZ-バッファアルゴリズムで計算されます。レイトレースでの影や影マッピングは明瞭でソフトな影の境界を効率的に生成することができます。[直接光源をレイトレーシング]オプションを選択すると、これらの計算を分割することができます。通常、このオプションが選択されている場合、逐次メッシュ分割を行うパラメータを、解析の品質を落とさず、より低密度な設定にすることができます。多くの場合、特に初期のメッシュ密度が十分な時は逐次メッシュ分割をオフにすることもできます。ラジオシティ処理が始まると、シーン中の全てのサーフェースから反射する光だけを計算します。この解析からRenderZone画像を生成する場合、影の計算を含む直接光源はレンダリングによって行われます。影を生成するためには[ラジオシティオプション]ダイアログと[RenderZoneオプション]ダイアログで[影]オプションを選択しておかなければなりません。[直接光源をレイトレーシング]オプションを選択した場合のレンダリング画像を図6.3.4(1)に示します。ラジオシティメッシュはそれほど密ではありませんが、影の境界がはっきりしていることに注目してください。図6.3.4(2)は図6.3.4(1)と同じシーンに[ピュアラジオシティ]を適用したレンダリングです。明瞭な影の境界を維持するためにメッシュ密度を上げる必要があります。




(a)ラジオシティメッシュ (b)レンダリングの結果
[直接光源をレイトレーシング]オプションを使用すると、エリアライトおよび線光源を直接光源として考慮するかどうかを選択できます。[エリアライト/線光源を含む]オプションを選択しないと、エリアライトおよび線光源から放射するエネルギーがラジオシティ解析中に計算されます。このオプションをオンにすると、エリアライトおよび線光源の直接光源はレンダリング時に計算されます。一般的に、光は拡散して照射するので、エリアライトおよび線光源ではシャープな影の境界は生じません。したがって、ラジオシティ解析でエリアライトおよび線光源を完全に処理するのがより効果的な方法です。エリアライトおよび線光源からの影の境界に不自然さが見られる場合は、[エリアライト/線光源を含む]オプションを使用してください。「ラジオシティのライト」セクションで説明したように、エリアライトおよび線光源の直接効果を計算することによって、レンダリング速度を大幅に短縮できます。
このモードでは、[品質]スライダーだけを使用するか、詳細パラメータを設定するかのどちらかで、ラジオシティを適用することができます。スライダーを変更すると、いくつかの詳細パラメータが自動的に設定されます。詳細パラメータは[詳細を表示]ボタンをクリックすると表示できます(図6.3.5)。このあと、[詳細を表示]ボタンは[詳細を隠す]ボタンに変わり、次に詳細パラメータを隠すときに使用します。

[初期メッシュ]:このオプショングループはラジオシティ解析に基づくメッシュの生成方法を制御します。このメッシュは密度を個別に設定できる2つの部分で構成されます。1つめの部分はすべてのオブジェクトとエリアライトのジオメトリを定義します。これをパッチといいます。パッチはラジオシティ解析の初期化の際に生成され、その個数は変化しません。2つめの部分が実際のラジオシティメッシュです。これはパッチを分割したもので、処理の進行に従って密度が高くなる場合があります。ラジオシティ解析により計算された光の強さはこのラジオシティメッシュに記録されます。そのため、この部分はレコーディングメッシュとも呼びます。
[パッチ]:このスライダーはパッチの密度を指定します。スライダーを左端に設定すると、サーフェース用のパッチが最小数だけ生成されます。スライダーを右端に設定すると、最大数のパッチが生成されます。パッチ密度のパーセンテージは数値フィールドにも入力できます。
[1パッチn個のポリゴンに分割する]:このパラメータは初期化時のラジオシティメッシュの密度を設定することができます。nは乗数なので、数値が1のとき、メッシュの密度はパッチの数と同じになります。数値を大きくすると、メッシュの密度は高くなります。
パッチは光を放射することができますが、分割されたメッシュは光の強さを記録することしかできません。一般的に、光を放射するパッチでは密度を高く設定する必要はありません。ただし、影の境界を明確に表示する場合や面で光の強さを急速に減衰させる場合は、場合によっては光の強さを記録するメッシュの精度を非常に高くする必要があります。レコーディングメッシュの精度をさらに高く設定するには2つの方法があります。1つは[1パッチn個のポリゴンに分割する]パラメータを使用して、最初に高いメッシュ密度を設定する方法です。もう1つは[逐次メッシュ分割]オプションを使用して、強さのコントラストが強い部分のラジオシティ解析を実行する際にメッシュの精度を高く設定する方法です。ラジオシティ解析を1回反復すると、光源の複数のポイントから光が放射され、各メッシュポリゴンに記録されます。パッチの密度はシーンの光の品質に直接影響します。光源のパッチの密度が高いほど、レンダリングの品質は高くなり、処理時間も長くなります。
[メッシュの密度の概算を表示...]:ラジオシティメッシュを初期化する前に、このボタンをクリックすることでパッチおよびメッシュポリゴンの数を概算することができます。この値は大雑把な概算値であることに注意してください。実際のポリゴンの数は概量の倍以上になったり、半分だけだったりするかもしれません。
[逐次メッシュ分割]:このオプションを有効にすると、最初の精度よりもより細くメッシュが分割されます。分割の程度は次のスライダーにより決定されます。
[品質]:逐次メッシュ分割の分割レベルを制御します。[直接光源をレイトレーシング]方式で適正なレンダリングに密度が高すぎるメッシュが不要であっても、影の境界部分のメッシュ密度を増やすのは有益です。このパラメータの値を高くすると、メッシュ密度が高くなり、処理時間が長くなります。
[サンプリング]:このパラメータグループはラジオシティ解析での光の品質を決定します。
[サンプリングの最小値]、[サンプリングの最大値]:光がパッチから放射される際には、パッチの面上でランダムに選択された点から放射されます。これらのフィールドにはサンプル点の最小数および最大数を入力します。これらのフィールドに大きな値を入力すると、不必要に処理時間が長くなる場合があります。通常は、最小値は1~5、最大値は10~20に設定すると、十分な結果を相応の時間で得ることができます。パッチ面でサンプリングされる点の個数は、最終的には[品質]メニューから選択する項目(以下で説明します)やパッチのサイズなど、他の要因により決定されます。
[品質]:このメニューには定義済みの品質レベルにラジオシティパラメータを設定する項目が含まれています。ラジオシティ解析の品質と時間は反比例します。つまり、品質を最低に設定すると処理時間が短縮されますが、通常はそのラジオシティを基にしたレンダリングの品質も低くなります。品質を最高に設定すると、ラジオシティの算出にかかる時間は長くなりますが、画像の品質も高くなります。
[標準]:この項目を選択すると、使用されるサンプル数が最小になります。
[良]:この項目を選択すると、使用されるサンプル数が最小と最大の中間になります。ただし、多くの場合は最小に近くなります。
[最良]:この項目を選択すると、多くの場合は使用されるサンプル数が最大に近くなります。
[サンプリング]内の以上のオプションがパッチから放射される光の密度を決定するのに対して、以下の2つのオプションは、光の強さが光が投射される側のどこに記録されるのかを制御します。
[頂点でサンプリング]:このオプションを選択すると、一次または二次光源から放射された光はメッシュポリゴンの各頂点ごとに個別に記録されます。すべてのメッシュポリゴンが三角形の場合は、光の強さの計算は3回実行されます。
[中心でサンプリング]:このオプションを選択すると、一次または二次光源から放射された光はメッシュポリゴンの中心で1回記録されます。中心でのサンプリングは、処理は高速になりますが、不自然さを防止するにはメッシュの精度を高くする必要があるかもしれません。一方で、このオプションを選択すると影がなめらかになり、影の境界のメッシュ精度を高くする必要はなくなります。どちらのオプションが適しているかは、シーンにより異なります。一般的には頂点でのサンプリングの方が精度が高くなりますが、メッシュの精度も高くなります。中心でのサンプリングは、処理は高速になりますが、不自然さが生じる可能性があります。
[エリアライト/線光源を含む]:このオプションをオフにすると、エリアライトおよび線光源から放射するエネルギーがラジオシティ解析中に計算されます。このオプションをオンにすると、エリアライトおよび線光源の直接光源はレンダリング時に計算されます。一般的に、光は拡散して照射するので、エリアライトおよび線光源ではシャープな影の境界は生じません。したがって、ラジオシティ解析でエリアライトおよび線光源を完全に処理するのがより効果的な方法です。エリアライトおよび線光源からの影の境界に不自然さが見られる場合は、このオプションを使用した方がよいです。「ラジオシティのライト」セクションで説明したように、エリアライトおよび線光源の直接効果を計算することによって、レンダリング速度を大幅に短縮できます。
[ライトの強さ]、[視点による解析]、[バウンディングボックスを使用]:これらのオプションは「共通のオプションタブパラメータ」セクションで説明しています。
[環境光として反射した光を適用]:ラジオシティ解析中は全体の光量の一部だけがラジオシティのメッシュポリゴンに適用されます。したがって、特に初期段階のラジオシティ解析をレンダリングすると、一般的には光量が不足して暗く表示されます。場合によっては、このオプションを使用して、一時的に光を追加する必要があります。このオプションをオンにすると、一次光源から放射されるがまだメッシュポリゴンには記録されていない光がすべてのメッシュポリゴンに環境光として適用されます。ラジオシティ解析の初期段階でこのオプションを使用すると、シーンが最終結果よりも明るく表示されます。一方、このオプションを無効にすると、それまでにメッシュポリゴンに記録された光による効果だけがシーンに適用されます。たとえば、ラジオシティ解析が60%終了している場合は、光の60%だけがシーンでレンダリングされます。したがって、最終的な結果よりも暗く表示されます。
図6.3.6は約40%の処理を基にレンダリングした2つの画像です。1つめの画像は[環境光として反射した光を適用]オプションをオンにしてレンダリングしています。2つめの画像はこのオプションをオフにしています。


(b)[環境光として反射した光を適用]オプションをオフにしたレンダリング画像